頭文字・ひ

ひぐらしの声が響く町 子供の声が似合う街
陽だまり湿らす一刻の 夕立も過ぎた掛川
ビロードの隙間もれるのは 10ホールズのシルバースター
額をつたって頬に流れた 叫びを忘れてなるものか

ひとのかたちにうまれつき
ひとのつもりでいきてゆく
ひれをうしないことばをおった
ひねもすかたれどつきぬぼこくご

一言じゃ言えない悔しさあたたかく
一筆じゃ足りないしつこさうれしくて
日々の暮らしに染み込んだ やさしい名前をなぞりつつ
皮膚のやわさもひびわれも つたない私の土産です

一人と一人はふたりになれず
彼岸の岸辺に咲く花は
緋色の姿で白に焦がれて
ひしめく波にも融けられぬまま

ひねくれちまったかなしみを
ひきょうにぬりかためるよりも
ひねくれちまったかなしみが
ひつようだったといえるまで
ひかりなければひをともし
びねつのつづくたびじでも
ひけらかすよりうちにだき
ひとをこりずにみつめたい

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